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生活習慣病

生活習慣病の治療は、水面下に隠れた生活習慣の改善が必要。
薬物での治療では本当の危機の解消はできない。

2型糖尿病をはじめとする生活習慣病とは、医師になって30年一貫して関わってきました。
生活習慣病は、薬では治りません。氷山と同じで、問題は水面の下に隠れている不健康な生活習慣です(下図)。
水面の上に見える検査値の異常は、水面下に隠れた部分の大きさを類推する目安でしかありません。

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例えば、心筋梗塞の原因として最大のものはLDL(悪玉)コレステロールです。
しかし薬剤を使ってLDLを下げても、心筋梗塞は減ってもせいぜい3割です。残る7割の原因は、まだよく判っていません。
糖尿病に至っては、生活習慣が乱れたままで薬剤に頼った治療をすると、肥満を招いたり低血糖を来したりして、却って寿命を縮める事にもなりかねません。
最近の流行りは体重を減らすという謳い文句の糖尿病治療薬(SGLT2阻害剤やGLP1受容体作動薬)ですが、これまた食生活の改善を伴わなければ半年ほどで効果は一気に薄れてしまいます。ネズミにSGLT2阻害剤を投与すると、最初こそ体重は減少して血糖値も低下しますが、やがて栄養が体外に漏れていると脳が感知するのか食欲が亢進して、やがて元の体重より増えてしまう事が知られています。

ちなみに、水面上にある氷山の中心は、どうやら糖尿病のようです。糖尿病の山が高いと周囲にある高脂血症や高血圧の山も引きずられるように高くなるし、逆に糖尿病が良くなるような生活習慣を身につけると裾野も低くなっていくからです。
そして、このイメージ図が示している最も大切なこと、それは『薬物に頼った治療は水面上の氷山を削るに過ぎず、不健康な生活習慣を改善しない限り水面下に潜む本当の危険を解消することはできない』という点です。

医療に携わっていると、日本人の寿命は伸びていると実感します。
「人生100年時代」は、実は恐ろしい事かもしれません。

ご存知のように日本は世界屈指の長寿国で、平均寿命は80歳を超えるところまで伸びています。
しかし、そこから健康寿命を引いた長さ、つまり自分の事を自分で出来なかったり苦痛を伴ったりする不自由な時間も、平均10年余りで世界有数の長さです。
このまま寿命が100歳まで伸びたとしたら、そうした不自由な時間はどれほどの長さになるのでしょうか。
そして健康寿命を90歳にしない限り、現在以上の社会福祉・介護が必要になるのです。

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『LIFE SHIFT 〜100年時代の人生戦略〜』を読まれた方は多いと思います。
ザックリと言えば、人類の寿命は時代とともに右肩上がりで、その勢いでいくと今年に生まれた子供の2人に1人が100歳まで生きる計算になる、そんな時代を如何に生き抜くか社会はどう変わるべきか、という内容です。
しかし私は、本題から外れた2つの事が気になりました。1つ目は、目の前の仕事をこなすための残業がいまだに無くならない今の日本で、どれだけの人がその「仕事」のステージに居ながら、学び直したり新たなシナリオに挑んだりする余力を持っているのだろうか、と言う疑問です。
そして2つ目は、これまた日本人特有の問題ですが、100年の人生を健康に生き抜ける人がどれほどいるのだろうか、という危惧です。
本文でも触れましたが、日本人は平均寿命こそ世界トップクラスですが、健康寿命との差、つまり認知症や寝たきりなどで不自由に生きている時間の長さも世界トップクラスです。欧米で長生きする人は概ね元気で、肥満の人も多く見られます。この本の中でも、健康への不安は驚くほど希薄でした。
そのあたりは、狩猟民族と農耕民族の差なのでしょうか。少なくとも日本人は、欧米人に比べて加齢や肥満の影響を受けやすく、血糖・血圧・脂質に大きな乱れが生じてしまいます。

高齢化とともに、医療を必要とする人数は増えていきます。医療の進歩とともに、一人当たりの費用も嵩んでいきます。
生活習慣病は、言うまでもないことですが、認知症や寝たきりなどの原因になって本人やその家族の重荷になるばかりでなく、社会保障費の増大につながって国の財政を圧迫します。「体脂肪が増える」イコール「生活習慣病」という認識は、「メタボ」というイメージのおかげで広く浸透しましたが、できうるならば「生活習慣病」イコール「深刻な社会問題」という認識も、もっと拡がって欲しいものです。自分の為にも家族の為にも社会の為にも、症状が出てしまう前の段階でなんとかしなければならないのです。
それどころか今の医療行政を見ていると、『できる努力を怠って自業自得とも言える状況に陥った人には、もはや社会保障は適応できない』という厳しい時代すら来かねないのではないかと危惧しています。すでに介護保険では認定が年々厳しくなり、症状が重くなっているのに等級を下げられた方も続出しています。
発病前の「未病」で止める、予防医学が求められるという事です。薬はその場しのぎでしかなく、健康な長寿にはつながりません。
そもそも痛くも苦しくもないのに、毎回長い時間を待って薬をもらい続ける人がどれだけ居るのでしょうか?

検診を受けた人の9割は、何らかの異常値を指摘。
この異常値という貴重なサインを無視しないことが第一歩。

では、不自由な時間の長さを最小限に抑える為に、いつから対策をとり始めたらよいのでしょうか。
早ければ早いに越した事はないのですが、若いうちでなければ出来ない無理や不摂生もあります。
一つの目安は、検診の異常値かもしれません。

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検診で全ての検査結果が正常範囲内という人は、受診者の1割程度しかいないそうです。
つまり検診を受けた人の9割は、何らかの異常値を指摘されているわけです。
そして異常を指摘された人の過半数が、その検査結果を放置しているそうです。
検診の正常値にどれ程の意義があるかは確かに議論の余地はありますが、マズイかなと思いながら知らんふりをしている人が沢山いる事も事実でしょう。
この時点で介入すれば、その後の人生を変えることが出来るのです。

私達は、そのような方達を対象にした医療を行いたいと考えています。その特徴は、以下の3つです。
1.待ち時間など受診へのハードルをできる限り低く抑える
2.コメディカルが担当を固定して話し合いを継続する事で信頼関係を築く
3.優先順位を考えながらオーダーメイドで改善の方策を話し合う
麻田総合病院(現・まるがめ医療センター)に赴任するまでの私は、川の下流に佇んだまま、溺れて流されて来る方々を救う医療に携わってきました。
それは労多くして実りは乏しく、悔しい経験を繰り返してきました。
そんな私だからこそ、川の上流にさかのぼり、検診異常値という貴重なサインを無視しようとする(道を踏み外しかけた)人に、説得力をもって事の重大さを説くことができると思っています。

生活習慣の改善はマラソン。短距離走では必ず挫折します。

そして、何をどう始めるのか。生活習慣の改善は、継続とペース配分が不可欠なマラソンです。短距離走では、必ず挫折します。
そして優先順位を間違えると、成果は出てくれません。

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やるべき事は、実はそう難しくはありません。それより事の成否を分けるのは、続けられるかどうかです。
短距離走で無理して突っ走ってしまうと、必ず挫折します。どんなに精神力の強い方でも、半年あたりが限度のようです。

コメディカルとのコミュニケーションで、相互理解と信頼関係の構築を。

糖尿病診療の経験を重ねるに従って、コメディカルが持つ可能性を感じるようになりました。
そして10年前に麻田総合病院へ赴任して、「コメディカル主体で継続して生活習慣を話し合う外来」を実現することができました。
その発展型として、三人のコメディカルと共に新たなクリニックを始めます。

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もし貴方が受診されたら、まずコメディカルによる生活習慣の聴き取りから始まります。
我々は生活習慣病についてはよく知っていますが、貴方の事は全く知らないからです。
生活習慣を正しく聴き取るには、相互理解に基づく信頼関係が必要です。
貴方が何をしているのか、そして何故そうしているのか、そこが判れば自ずとやる事は決まってきます。
優先順位を考えながら、習慣として定着するまで一つ一つ粘り強く継続するだけです。

そして最終目標は、通院の卒業です。

生活習慣の問題点が明らかになり、対処法が軌道に乗ってくれば、結果はそれに伴ってきます。
そして処方ナシになって自信も付いてくれば、いつまでも通院する必要はありません。
これが私たちの理想とする、通院卒業です。定期的に職場などで検診を受けていただき、異常が出れば再び相談にいらしてください。
また処方ナシに越した事はありませんが、必要最低限の処方でストレスなく生活していく事も一つの選択肢です。
そんな場合は、お近くのかかりつけ医(家庭医)に御紹介する方法もあります。
貴方に合った健康寿命の延ばし方を、ともに考えていきましょう。

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